サボテン

サボテン

サボテンシャボテン仙人掌、覇王樹)はサボテン科に属する植物の総称である。その多くは多肉植物であるため、多肉植物の別名として使われることもあるが、サボテン科以外の多肉植物をサボテンと呼ぶ事は誤りである。

語源

16世紀後半に南蛮人によって日本に持ち込まれたのが初めとされている。彼らが「ウチワサボテン」の茎の切り口で畳や衣服の汚れを拭き取り、樹液をシャボン(石けん)としてつかっていたため「石鹸のようなもの」という意味で「石鹸体(さぼんてい)」と呼ばれるようになったとする説が有力中村浩「園芸植物名の由来」(東京書籍)236-237項で、そのため1960年代ころまでは「シャボテン」のほうが正しいとする人がかなりいた。英語名のカクタス(Cactus)は、ギリシア語で「棘だらけの植物」を意味するカクトスという単語に由来している中村 239項

分布

南北アメリカ大陸及び周辺島嶼(アメリカ州)の乾燥地でみられる種が多いが、中南米熱帯の森林地帯で樹木や岩石上に着生して育つ種や高山に生える種、北米の湿潤な温帯や冷帯に育つ種もある。しばしばサボテンは暑い気候を好むものばかりであると誤解されることがあるが、その分布域の気候は様々であり、低温に弱いものもあれば、氷点下になっても生存できるものもある。

形態

サボテンの形態は様々であるが、一般的に茎は筒または球型、葉は針状もしくは退化している。全ての種が一種の短枝である刺座(しざ)またはアレオーレ(areole)と呼ばれる器官を持つ。基本的に腋芽には刺座が形成され、多くの場合そこにスポット状に葉の変化した刺が密生する。またしばしば刺座は綿毛で覆われる。根は主根が深く伸びる主根系のものが多く、中には主根が芋の様に肥大するものもあるが、主根が発達しないひげ根系のものもある。貯水組織が発達し、耐乾性に優れているものが多い。

サボテンの最も原始的な形のグループはコノハサボテン亜科のコノハサボテン属 (:en:Pereskia|Pereskia) で、長枝につく葉は刺状にならず、木の葉らしい形を維持している。一見サボテンに見えない形をしているが、刺座が存在するのでサボテンの仲間と分かる。こうした形の祖先からより多肉植物として特殊化し、長枝の葉が鱗状に退化したウチワサボテン(オプンティア|オプンティア属など)、更に針状に変化していない葉を全くつけない柱サボテンという順番に出現したと考えられる。球形のサボテンは柱サボテンの太くて短いものであると見なせる。

花弁中に含有される色素は、通常はアントシアン系のアントシアニン|アントシアニジンやペチュニジンなどであるのに対し、サボテン科はベタリン系色素を含有し、化学分類上マツバボタン(スベリヒユ科)などと類縁関係があるとされている。

栽培

サボテンの生態については誤解が多い。「サボテンは砂漠に生えているので、水を遣らなくて良い。」又は「サボテンは花が咲かない。」等はよくある誤解である。森林性サボテン(木の葉サボテン)を除く多くのサボテンが乾燥地帯に自生しているが、サボテンの自生する地域は乾季と雨季がはっきりしているだけで、サボテンは水を好む植物である。

種類によって成長する環境が異なったり、他の植物と比べ成長が遅いため、一般の植物と同様に潅水すると根腐れを起こして枯死することが多い。開花については、育成環境(温度、湿度、光量、潅水)が悪いと開花しないし、開花年齢に達していないために開花しないことから誤解されるが、適切な管理を行えば花を咲かせる。サボテンの代表品種「金鯱(きんしゃち)」 (:en:Echinocactus grusonii|Echinocactus grusonii) は開花するまで30年前後かかるため、市中の花卉店で購入した場合には花を見るまでに相当の時間を要する。

サボテンは熱狂的な愛好家が多い植物である。刺を楽しむ品種(エキノカクタス属など)、花を楽しむ品種(マミラリア属など)や交配によって改良種を作出して楽しむ品種(有星類:兜、鸞鳳玉他)など栽培は個々人の趣味・嗜好により更に細分化されるため、特定品種を栽培する「名人」が品種毎に存在する。全国各地にサボテンマニアの同好会が多数存在している。
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繁殖

種子繁殖

種子繁殖は一度に大量の苗が得られること、様々な個体変異が生じる可能性があることなどから試みられることが多い。
サボテンは自家不和合性 (植物)|自家不和合性(同一個体の花粉が柱頭に受粉しても結実しない)の種類が多く、結実させるためには同種の別個体の花粉を授粉する必要がある。一つの個体から挿し木など栄養繁殖で増やされた個体同士は親と遺伝的に同一なクローンであるため、有性生殖は不可能であり、結実しない。
果実や種子の大きさや形は種類によってかなり異なる。果実は緑色から赤色に熟すものが多く、種子は通常黒色である。

採種するためには熟した果実をガーゼなどで包み、水中で押しつぶすようにして洗うとよい。ただし、ウチワサボテンのように果実に刺を有している場合には注意が必要である。
ガーゼに残った種子は紙の上などで乾燥後播種するとよい。播種はポットに清潔な用土を満たし、充分灌水した後に行うとよい。微細な種子は播種後に覆土(土をかぶせること)する必要はないが、発芽するまでは絶対に乾燥させないよう腰水(底面吸水)灌水を行う。播種後に鉢の表面を紙で覆い、さらにガラス板などで覆うとよい。

発芽後は直ちに紙を取り除き、ガラス板の覆いを少しずつあけていくとよい。

栄養繁殖

挿し木
枝や吹いた仔を切り取って挿し木する。挿し木する部分は鋭利な刃物で切り、切り口は日陰で通常1週間くらい乾燥させる。太い柱サボテンなら2〜3週間くらい乾燥させる。用土は砂、バーミキュライトなどを少し湿らせたものを使う。挿し木する部分は、用土に埋めたり突き刺したりせずに、静かに置いておく。
切り口が大きい場合は乾燥中に中心部がへこみ挿し木に支障があるため、予め周囲の皮の部分を削り、中心部を突出させた状態で乾燥させた方がよい。
接ぎ木
根腐れしやすい種をしにくい種の台木に接いだり、生長が遅い種を早い種の台木に接いだりすることで栽培を容易にするのが利点である。コノハサボテン、ハシラサボテン、ウチワサボテンなどを台木として用いることが多い。台木がハシラサボテンかウチワサボテンの場合は、台木と接ぎ穂の維管束を一点だけでも合わせ、活着するまで糸で固定する(実生接ぎでは特に固定しない)。台木がコノハサボテンの場合は、とがらせた台木の先端を接ぎ穂に刺してからピンやサボテンのとげで固定する。特殊な接ぎ方として、実生接ぎ、一部の刺座部分だけの接ぎ木、逆さ接ぎなどがある。
ハシラサボテンを台木や穂木とする場合、挿し木と同様に皮の部分を削り取り、中心部を突出させて調整する必要がある。また、ウチワサボテンを台木とする場合は扁平な両端部分を斜めに削り落としておく方がよい。これらの作業を怠るとサボテンが変形して活着しないことがある。
穂木と台木の種が異なる場合、不親和性が見られる場合もあるため注意を要する。

食用

紐サボテン属の果実(ドラゴンフルーツ)やウチワサボテン属の果実(トゥナ Tuna)は主に中南米、北アフリカ、アラブ諸国、スペイン、フランス、ギリシャ、イタリアなどのヨーロッパの国で一般的な果物である。ウチワサボテン属はメキシコ、イスラエル、タイ王国|タイなどで果樹として栽培もされている。若い茎節(ノパル Nopal)はメキシコ料理では野菜として扱われる。豊富なミネラルと繊維質、ビタミンを含み、昔から貴重な食物として珍重された大切な栄養源である。さらに傷の手当、熱さましなどの治療、肥満、糖尿病、二日酔い、便秘、日焼けによるシミなどを予防する民間薬としても使われてきた。

アメリカの育種家ルーサー・パンクは、サボテンを改良して食用、飼料用のトゲナシサボテンを作り上げた。パンクはヒョウが口を血だらけにしてサボテンを食べている姿を見て、トゲナシサボテン改良の着想を得たという

その他の利用

セレウス属の鬼面角(Cereus peruvianus)のモンストローサ(綴化、帯化奇形、生長点が線になった異常形)が電磁波サボテンなど称して、電磁波を吸収するサボテンとして販売されることがあるが、科学的根拠はもとより、その根拠となったという論文も存在しない。

アルゼンチン・ウマウアカでは木を建築材やランプシェードとして加工している他、メキシコ・オアハカ州などでは成長した柱サボテンをフェンスとして活用している。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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